野田の戦時中の一風景

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野田の戦時中の一風景

■所在地佐賀市嘉瀬町
■登録ID102

 桑の木を移植し、野田にある畠は、どこでも桑畑になった。嘉瀬川の川中や川外の畑も桑の木だらけ。命令でもきたんだろうか。桑の葉を蚕さんに食べさせ、繭になし、それを紡いで生糸になし、供出していた。各家の庭中にも、家で寝る部屋以外は天井まで棚造りし、竹の大きなザルに入れ蚕飼いに追われていた。野田のお寺はじめ、どこの家に行っても、ガスガス桑の葉を食べる蚕さんの音、用事が話されん位厭な音だった。蚕さんが繭になったら、熱湯につけて、糸をつむぎ、より入れが始まる。手車回しはバアチャンの仕事だった。生糸ができ上がる様子は、不思議で珍しくもあった。桑の葉の毛虫は、大嫌いで加勢にならず、桑の実の赤いのは、学校に持って行った。熟した桑の実は、衣類や口の中の舌まで紫色に染めてとれんやった。バアチャンが生糸で反物つくり、一着和服を作ってくれた。

出典:野田のよもやま P.40