荒神

荒神

■所在地佐賀市東与賀町
■登録ID1093

かつては、どこの家庭でも庭中の奥の釜屋にヘッチィ(かまど、くど)が座っていた。ウーベッチィ・ナカガマ・キーベッチィなどと大量の煮たきをする大釜から茶沸かしやおかずの煮たきに用いる大小のかまどが、4連ほどあった。
「へ」は煮たきの道具で「へつ火」が訛ってヘッツィ(ヘッチィ)となったといわれ、火の神をさすことばともなっている。物を煮たきする火所は食生活の要をおさえている神聖な所であるから、そこが火を統轄する火の神の鎮座する場となったと考えられる。
火の神を荒神というのは修験道や陰陽道で説かれている三宝荒神と混同されたものであろうとされており、三宝荒神は仏・法・僧の三宝を守る荒神であるといわれ、不浄を嫌うため家の中で最も清浄とされるヘッチィの中に居るとされる。
ウーベッチィ(大釜)のそばの柱に小さな祠を荒神さんとして祀ったり、ウーベッチィをウーコージンさんともいうようにウーベッチィそのものを荒神としているところもある。
不浄を嫌うところから刃物をのせることを忌み、正月前には座頭さんによるススハリャー(荒神祓い)が行われた。1月9日には、子ども達が荒神相撲をしヘッチィ餅を食べた。
ヘッチィ餅を未婚者が食べると縁遠くなるという伝承もある。
遠くへ出かけるときに「ヘッチィさんのおヘグロ戴き」といって、ヘグロ(スス)を額に塗りつけて道中の無事を祈った。これは荒神の持つ激しい験力に期待するものであった。
火の神としての荒神は、また、農耕の豊穣をまもる農神としての性格もあわせもっており、田植えはじめの「田の神さん祭り」に3把の早苗を供えて豊作を祈願した。

出典:東与賀町史P1064