野狐と白毛婆(しらがうんぼ)・白毛爺その1

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野狐と白毛婆(しらがうんぼ)・白毛爺その1

■所在地佐賀市西与賀町
■登録ID209

16、7からですね、私ゃかまぼこ屋でございましたが、20歳頃までかまぼこ屋しとりました。
そいで、かまぼこをいのうてなた、午前3時頃、もう、一日(ひして)過しなって。多久まで80斤(きん)から100斤いのうて、1日でかけて来て、そいぎ、ちくわとかまぼこもんのまい。そがんしていのうて卸(おろし)行きよるわけですよ。
そいけん、野狐でんなんでん出て来にゃならんばってん、ほら、朝、3時から行たてばんたぁ、そいで、帰ぇさみゃあは、もう4時頃にならんば家にゃ帰って来よりませんでした。
そして、行きよったところが、三日月の先の方からなた、西さい分れりゃ高柳ヶ里ちゅうてございました。そして、高柳ヶ里ちゅう所を行きよっちゃった向こうに、明かいが一つ見えましたですもんなた。おお、今のう誰じゃい行燈つけて行きよるね。今からちょっと、60年前のことですもんね。行燈つけて行きよんね、こう思った。そして、出っかしたなた。こっちは風で右から吹きよんもんじゃい、ちょうど出っかしました。そうしてみたところ、こうして見たぎ、白髪姿の、あたいよい太かとの立っとんもんのまい。びっくいしましたのまい、これにゃあ、本当に。そいぎ、そいが言うことにゃあ、
「かまぼこ屋さん」「ないかい」「あの、家の娘がお前、丹坂越えて来い」「うん、越えて行く」「あっけぇ、おとうにん人さんのおっちゃて、家の娘が縁じいとんもんのう。その娘に、『きゅうは稲刈りじゃけん、来てくいろ』て、言うてくれんかい」
て言うて、あたし言づけさすばん。そいばってんがこっちは、つっくるびいて、あなた、白髪姿じゃんもんじゃあけん。そして、
「うぅん、ううん」
ちゅうて、もう返事ばかいして、かけて走ったわけ。あたし、えすかじゃもんじゃっけん。
そうしてみたところが、向こう見たぎ、ほうかぶいして、またこっちゃい向いて来んもんのまい。なんの、娘方(がや)ぁじゃ行きよっとたんたぁのまい。使ぇ、親父がこいがこうして見たぎにゃあと、こんど白髪爺の立っとんもんのまい。ほんに、びっくいしてあたしゃ足ゃあくりゃあぐうして駆けて来た。

出典:西与賀の歴史とその周辺p72