彼岸ごもりと遍路

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彼岸ごもりと遍路

■所在地佐賀市大和町
■登録ID2276

 彼岸は春分と秋分の日を中心としてその前後3日間ずつ合わせて1週間をさしていう。彼岸という言葉は仏典から出たもので梵語の波羅密多の漢訳でくわしくは「到彼岸」という。つまり迷いの此の岸(現実の生死という苦悩の世界)から悟りの彼の岸(理想の涅槃の世界)にいたることである。1週間にわたる彼岸会のことで印度や中国にはなく日本独得のものである。彼岸には墓地の清掃をして墓参をする。また、餅やおはぎ、だんご等を作って親類の仏前へ供えたり、近隣へは野菜のあえ物や煮豆などを配ったりする。この彼岸中は「彼岸ごもり」といって、地区のお宮の堂などに集まり、先祖をしのび感謝するもので主として一家の主婦が出席する。各自お茶や茶菓子、野菜のあえもの等を持ち寄り四方山話をする。この彼岸中に遍路が隊を組んで地区のお宮などへ巡ってくる。遍路というのはもともと弘法大師修行の遺跡といわれる四国八十八ヶ所の霊場を祈願のため巡る人のことであるが、この四国八十八ヶ所は遠隔の地であるため行きにくいので日本のあちこちに八十八ヶ所の霊場(札所)を設け、これで代行するわけでこの辺でも佐賀郡市一帯に八十八ヶ所を定め、巡路、宿泊地を定めて行脚をしている。遍路の列は法螺貝を吹きながら地区に入ってくる。遍路は遍路笠をかぶり同行2人と墨書した白い法被をかけ、胸には八十八ヶ所に供する札箱を下げ「おぶっしょ」という袋に米を入れ、それをお賽銭代りにあげる。
参詣が終わると地区の太子講仲間の人が用意したお茶、お握り、おはぎ等の接待をしたり、マッチなどを配ったりする。最近も行われているが参列者も往年ほど多くはない。

出典:大和町史P.650〜651