おば捨て山

おば捨て山

■所在地佐賀市大和町
■登録ID2337

 昔、ある村では年寄りになるともう役に立たないというので、おば捨て山へ捨てられていた。その村で年老いた母をいよいよ山へ捨てに行くある家があった。その老母をその息子と孫の二人で、もっこに乗せて山へ連れて行った。山にさしかかると、その老母はもっこから片手を出して、少し進むごとに木の枝を折り曲げた。なぜそうするのか息子は不思議に思いながらも別に気にも止めなかった。
 やっと山の上へ着いて老母を下し、帰ろうとする息子を老母は呼び止めて「これ、息子よ、もう日が暮れかかっているし、お前達が帰る時、道に迷わないように木の枝を折っておいたから、それを目じるしに帰りなさいよ。」といった。息子は最後まで子供のことを思ってくれる母を捨てた苦しさ、辛さを胸に抱きながら山を下りた。その途中、孫が父に向かって「今度は私達のお母さんを連れて又この山に捨てに行かねばなりませんね」といった。父はこれを聞くやいなや、一目散に山へ戻り、老母を背負って連れ帰った。そして人にわからぬようにかくまっていたが、誰いうとなくそれが知れて、ついに役人の耳に入った。役所に引き立てられた父は事の次第をありのままに申し立てた。それ以後この村ではおば捨ての風習が止まったという。

出典:大和町史P.671〜672