東分下の浮立

東分下の浮立

■所在地佐賀市巨勢町東分下
■登録ID624

この地区には郷土芸能としての花浮立が伝承されていて、巨勢神社のお下りの時の熊野神社と巨勢神社に奉納される。この浮立は正しくは神野の掘江神社の神主が始めたと言われ佐賀平野一帯に広がった玄蕃一流の浮立である。笛や太鼓と鐘の囃子に合わせて踊るものでこれに天衝舞と言われる独特の踊りがあり民俗芸能の姿をしている。
末次氏宅に伝わる浮立大太鼓陰之巻によると弘治元年(1556)山本玄蕃に始まり安永8年(1779)古賀次右衛門が当地区末次栄蔵に伝授したものであると記され、どんな理由でこの地区に取り入れたかは明らかではないが、この巻き物には大太鼓の打ち方などが記されている。また、その中に、「昼夜に限す太鼓を打つは諸魔を払い諸願を成就す」と記され、悪魔払いや五穀豊穣、てんぴ追い、雨乞いなどにこの浮立を舞うという伝承がある。
浮立の練習は13年に1度の巨勢神社のお下り当番の年に盆過ぎから地区の広場で夜行われ、巨勢神社お下りの日には地区の人々でこの浮立で送迎し、奉納をする習わしである。
浮立役者の役目と服装
1.鐘 約16人(中年の男) 法被に股引きで身を固め、黄色の帯をしめ、しゃぐまをかぶる。
2.笛 約4人(中老) 黒足袋をはき、横笛1本を持つ。
3.もりゃあし(踊り子 若者男女) 約20人〜30人 ぞうり、花笠、小太鼓、手甲、たすきを身につける。
4.大太鼓一人(末次家) わらじ、脚絆、天衝を身につける。
5.大太鼓の助手1人 法被、脚絆、わらじ、天衝を身につける。
6.さいりょう人(世話役) 数人 紋付きを身につけ、提灯を持つ。
当日、浮立役者は権現さんの所に集まり、鐘、もりゃあし、大太鼓、笛の順に並び道行きをする。
巨勢神社に奉納の時は、「神の舞」として、天衝を被り「西方舞」の「うしろ巻」を太鼓に合わせながら、「そもそも浮立と申するは、古のころよりも 竜神祈るかしわ手に 打って祈れば竜神も ゆるぎ出させ賜いける 東南西北の悪魔を払って白酒の露を授けたもう。」と謡い終わると笛の合図で踊る。
舞の曲は神の前、四方拝、道行き、高い山、豊年、世渡りなど十数目で曲の変わり目に「後ろ巻」のお謡をあげる。

出典:巨勢町見てあるきP.40