馬の落とし物 (和尚と小僧)
馬の落とし物 (和尚と小僧)
■所在地佐賀市川副町
■登録ID2090
ある寺に和尚さんと、おしゃべりの小僧さんが住んでおったと。
和尚さんは小僧さんに、
「見たもんな見たごと、聞いたもんな聞いたごと、ようしとれ」と言って、叱っていた。
ある日、和尚さんは、
「今日は、小僧、小僧。供養に行くけん馬いっちょ出せ」と言った。小僧は、和尚さんから言われたとおりに馬の支度をした。
和尚さんは帽子を被って馬に乗り、小僧さんはその後ろから歩いて行った。供養先へ行く途中、急に強い風が吹いた。和尚さんの帽子は吹き飛ばされた。小僧さんは、知らんふりをして帽子を拾わなかった。
和尚さんは供養先へ着くと、
「あら、小僧、小僧。帽子は拾うて来たかぁ」と言った。すると小僧さんは、
「あんたぁ、『見たもんな見たごと、聞いたもんな聞いたごと、ようしとれ』ちゅうたけん、見てきた」と言った。和尚さんは、
「馬鹿が。馬から落ちた物は、何でん持って来ぇ。早う取って来ぇ」と言った。
小僧さんは帽子を取りに戻った。小僧さんは、馬の糞を拾って、帽子の中に入れて戻って来た。小僧さんは、それを和尚さんに手渡した。和尚さんは、
「馬鹿がぁ。糞まで持って来ン者が何処ぇあっかぁ」と言って、小僧さんを叱った。すると小僧さんは、
「あんたぁ、和尚さん。『馬から落ちた物な、何でん持って来ぇ』ち、言いんきったもんじゃい、こいも馬から落ちたけん」と言った。
そいばあっきゃ。
(西古賀 中川ミヨノ)
出典:川副町誌P.907〜P.908