弘法大師とエツ

弘法大師とエツ

■所在地佐賀市諸富町
■登録ID1635

日本では筑後川河口だけにしか住まないというエツ(斉魚・刀魚・銀刀魚などと充てる)は、カタクチイワシ科の魚で体長30〜40cmほどで身は薄く銀色の細かなウロコにおおわれた表面は透き通るように鮮かである。
4月下旬頃、川をさかのぼってきて6月から8月にかけて下流の水域で産卵する。諸富橋の上流から下流数キロメートルにかけてサシ網で獲る。
料理法は刺し身・あらい・煮物・塩焼き・あらだき・てんぷら・南蛮漬け・酢のものなどで、小骨が多いので裏表に200回以上の包丁を入れる。
アシの葉を思わせるこの魚には叙情的な伝説がある。
約1,400年前、初夏の激しい雨の日、筑後川の河口に一人の旅の僧がズブ濡れになって佇んでいた。見れば身なりは貧しくお金も持たない様子である。向こう岸へ渡ろうとしたが誰も相手にしてくれなかった。見かねた近くの老漁師が自分の舟で渡してくれた。この老人の親切に感謝した旅の僧は、お礼に「魚のとれないときは、この魚をとりなさい」と岸辺のアシの葉をとって川に流した。アシの葉は魚に姿を変え群れをなして泳いでいった。この貧しい旅の僧は九州を行脚していた弘法大師だったという。
また、徐福が上陸するときに押しわけてできた片葉のアシの落ちた部分がエツになったとも伝える。

出典:諸富町史P.1235