尼寺林と洪水敷

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尼寺林と洪水敷

■所在地佐賀市大和町
■年代近世
■登録ID2187

 川上川では洪水の時に、貧弱な堤防が決壊しないようにするため随所に「ノコシ」が設けられ、この「ノコシ」を越えて外側に放流されるようにして水勢を減殺するように計画されていた。「ノコシ」の底部は頑丈な石畳にしてあり、激しい水流のために決壊しないよう徹底的に補強設備を施し、上部は土俵を積み洪水の時の放流口とした。しかも乗り越した河水や土砂が付近の耕地を荒さないよう徐々に氾濫させ、水勢を減殺するように工夫されている。すなわち水防林として五町歩(5ha)の広い竹林を設けた。これが尼寺林である。いわゆる洪水敷であって、現在は大部分が開墾されて畑地になり、昔の面影としてわずか嘉瀬川岸の竹林のみが残っている。更に石井樋から惣座に至る「本土井」を築き、その外側に平素は水のない川(第二の洪水敷)を設けて、竹林をくぐって流れ込む水をこの川に入れ、下流に流す方法が取られている。洪水の時に1番被害を受けるのは砂礫が流入して耕作ができず、これを取り除くのに非常な手数が掛ることであり、この砂礫を水防林で濾過し、更に第2堤防の外側の川で下流に排出するので、泥水が田畑に流入することがあっても、それは微粉状の土と水で、水が引けば泥水は客土となり田畑に益することともなった。すなわち尼寺林は水防林であり、洪水敷であったわけで、堤防自体の補強と洪水の水勢弱化に大きな役割を果たすものであり、その濾過性は泥水だけを耕地に導くという地力の更新にも役立った。

出典:大和町史P.276〜277

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