絹本著色普賢延命菩薩騎象像 一幅
絹本著色普賢延命菩薩騎象像 一幅
■所在地佐賀市大和町大字川上 実相院
■文化財指定状況佐賀県 重要文化財
■文化財指定日昭和50年2月24日
■登録ID5296
脊振山地が佐賀平野に開ける嘉瀬川中流右岸の小高い所に、真言宗御室派河上山実相院がある。その創建は寛治(かんじ)3年(1089)、河上神社社僧円尋(えんじん)が河上山別所を開いたことにさかのぼるとされる。
当寺伝来の普賢延命菩薩像は、絵絹が三幅一舗、縦123.0センチメートル、横79.0センチメートルの掛幅装である。
大きな頭光を負い、頭上に五仏を戴き、顔は1面。手は20臂(ひ)(本)で、本手には金剛杵(こんごうしょ)、羂索(けんさく)、蓮華(れんげ)つき独鈷杵(とっこしょ)、金剛鈴をとる。他の16臂には輪宝や羯磨杵(かつましょ)、火災宝珠、三鈷鈎(さんここう)などの仏具をとり、蓮華座上に結跏趺座(けっかふざ)する。月輪(がちりん)(像を囲む円)下には、6本の牙を備え鼻で独鈷杵をとる4頭の象が配され、それぞれ頭上に四天王の一つを戴く。この図像は真言宗に特徴的なもので、特に「覚禅鈔(かくぜんしょう)」所収の図像によく似ている。
色彩的には、群青(ぐんじょう)を基調色とし、朱線でくくった白肉色の普賢菩薩や、朱線でくくり部分的に朱暈(しゅぐま)を施した白象を対比させる。持物や瓔珞(ようらく)、裙(くん)の文様などに金彩し、頭円光には五色の繧繝(うんげん)彩色(濃淡のある色の帯の繰返し)を施す。
目鼻立ちは細く、痩せた感じの丸顔で、体躯は痩身でなで肩。肩にかかる垂髪は賑やかな曲線を描く。
暗い色調や的確な表現、宋風の影響と特色ある図像などから、この絵は、南北朝時代に東密系の絵仏師により描かれたものと考えられる。