有明海は、潮流の干満の差が著しく、干潮時には広大な干潟を形成する。この干潟は、河川の運搬した微粒の有機物を多く含んだ泥土が厚く堆積したものである。この干潟に生息している魚介類はムツゴロウをはじめ、干潟独特の生物が多い。従って、これらの魚介類を捕獲するための漁法、漁撈用具は生態に対応した捕獲に最適な機能をもつ特有なものであるが、その構造は極めて単純である。
有明海の漁撈は、干潟を中心とする漁撈・沖合の漁撈・養殖業の三種に分けられる。古くから干潟漁法、その他特殊な漁法が行われてきたが、土砂の堆積や干拓の進捗によって急激な変貌を余儀なくされたため、古い用具類は滅失寸前であった。
収集・保存された漁撈用具は、157種293点にのぼる。干潟漁撈具66、漁網類88、貝採取用具33、舟道具31、保存加工用具25、服装9、その他48となっている。これらの漁撈具の中には、漁法の変遷等によって、既に禁止された漁具類もあり、有明海の漁撈を理解する上で、貴重な資料となっている。